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ミックス〜マスタリングを振り返って

5月にリリース予定の今回のアルバム。

長期に渡ってレコーディングを重ねてきましたが、ギターの音を録るというのは本当に難しいと実感しました。

同時に、いろいろな事を考え続ける日々でした。

 

 

【コンプについて】

私のレコーディングは基本的にコンプレッサー(以下コンプ)を全く使わない方向なので、性能の高いマイクを使う場合は特に距離や角度を詰めるシビアな作業が必要です。

 

コンプとは何か?

 

コンプとは、簡単に言うと”音を圧縮する”エフェクトです。圧縮してダイナミクスを減らすことで音像を慣らしてくれる効果があります。

本来あったダイナミクスを減らすことで、演奏時に発生する様々な”差異”を埋めてくれる作用もあります。

結果として、少しくらい音程が気になっても、少しくらい表現にバラつきがあっても、それなりに聴きやすいものにしてくれる。これは決して悪い意味ではなく、積極的な音作りをしていく上でとても有用なものなのです。

特にポピュラーの世界では、コンプを使わない録音現場はほとんど無いでしょう。ドラムスの入ったバンドでヴォーカルのささやき声がバンドに負けないレベルで収録されるのも、音の圧縮を使ったテクニックです。

 

いろいろと便利なコンプですが、その便利さがそのままネガポイントにもなります。

つまり、使うほどに”ギターの元の音”とは離れていってしまう。ダイナミクスを犠牲にするのだから当然といえば当然の事です。

 

元来ギターという楽器は完全とは言い難く、音程も合いにくいし、開放弦と押さえ弦の音の差は目立つ。

コンプを活用したり、あるいは楽器自体のダイナミクスを減らす作り方にすることによって一定の解決には至りますが、私はそういったでこぼこを均一化することが必ずしも良しとは思いません。

ギターの響きは深く、演奏の各所に”ゴースト”(のようなもの)を吹き込むような、無くてはならないものだと思っています。

そんな清濁併せ呑むようなギターの響きを愛せるならば、”そのまま”を盤面に収めたいと思うのは当然の流れと言えます。

 

もちろん、コンプを使うかどうかは演奏者の選択ですることですし、出来上がったものが良いものであれば良しです。

ただ、”自分はなぜこうしたのか”という理由を常に自分に突き詰めていく姿勢は、制作をする者には必要だろうと思います。

そういった話を、ギタリスト同士で一度してみたいですね。

 

【リバーブ】

それと合わせて、今回はリバーブをしっかり使おうと思っていました。

ギターの響きをなるべくスポイルせずに録った素の音源は、ナチュラルなリバーブが既に録れています。

その上でどのようなリバーブを足すのか、ミックスで詰めていきました。結果として、全11曲のうち3曲はリバーブをかけずに、まったくの素の状態で収録しています。

 

放射させるのか裾野を広げるのか、近いのか遠いのか、実音に効かせるのか余韻を意識するのか。

プレイヤーとしての私は録音技術としての提案できませんが、自分のイメージとエンジニア林さんの方向とをすり合わせる作業となります。これが実に楽しかった!ミックスでこんな風に追い込めるのかと驚きの連続でした。

各曲のキャラクターが生き生きとしてくるリバーブ設定をすることができました。

 

ここまで自分のイメージに寄せて音像を詰められるという手応え、それこそが今後の収穫でした。

 

 

【マスタリング】

そしてマスタリング。

まずレベル調整です。

これはミックス以上に時間をかけたかもしれません。

曲によってばらつきのある音量を、アルバムとして通せるように合わせていきます。

レベルが突出したポイントにリミッターをかけつつ全体のゲインを過去のアルバム同等にしていきます。(ちなみに今回のアルバムでは、リミッティングポイントは2箇所のみだったと思います。)

音量は、その曲のピークを意識するのか、前半を意識するのかで大きく変わってきます。

前後の曲の関係だけでなく、アルバム内でシャッフル再生した時にも違和感がないように微調整を繰り返しました。

 

そして大事な大事な曲間。

0.5違うだけで全く別のものとなる曲と曲の”間”。

まずは作業画面を見ながら設定し、テスト刷りしてそれを別プレイヤーで再生してを繰り返します。

すると最初の印象と大きく変わってくるので、そこを再度微調整。

あと運転しながら、スピーカーを見つめながら、目をつぶりながら、それぞれ聴いてチェックします。

はてしない作業ですが、良いものが生まれる瞬間に立ち会えると思うと、どんどん頭が冴えてきて苦になりませんでした。

 

【まとめ】

こうして出来上がったニューアルバムを聴き返していると、本当に良いものを生み出せたのだなと実感しています。

素晴らしい鳴りのギターと性能の高い機材の力がいかんなく発揮された事がとても嬉しいです。

やっぱりレコーディングは大好きですね。

楽しみが終わってしまった・・・

またしばらく、爪をとぐ期間(私の場合は文字通り)となります。

author:伊藤賢一, category:音楽, 23:01
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